超合理主義者なので、好きなものだけで料理する
合理主義・・・慣習・伝統・常識に囚われず、目的達成のために最短・最効率な手段を選択していこうとする態度。効率主義。(Wikipediaより引用) つまり、ズボラの最終形態。
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自炊を始めて1年が経った。自炊と言っても、大層なものはつくっていない。昼は袋麺ばかり食べているし、調理道具は100均の包丁に100均のまな板、片手鍋に大小フライパンという、極貧スターターキットのみ。
参考までに、以前までの私の料理スキルを軽く紹介しておきたい。
○コンロをひねることができる。押しボタン式の場合、このスキルは発揮しどころがない。
○米を研ぐことができる。(本能に基づく)
○レンジでキャラメルを作ろうとして、タッパを溶かしたことがある。
以上です。
さて、ここから少しは成長したと思うので、この1年の集大成を作りたい。超合理主義者(自称)としての見地から、本当に役に立ったものだけを使えば最高の料理となることが予想できる。そこで、まずは何が本当に役に立ったのかを確認する。
4/7
浜に打ち上げられたエビのような冷凍餃子と、しなっしなのほうれん草がこちらの不安をバサバサと煽る一皿から、私の自炊(仮)は始まった。
栄養価が高そうという理由でとりあえず買ったほうれん草だが、茹でたら死ぬほどかさが減って凹んだので、これ以来買っていない。
唐突だが、日常的にパックごはんを食べている人には是非知っておいてほしいことがある。
それは、1週間に一度だけでも米を炊くことができれば、「冷凍」という天才により賜りし方法によって毎日一食は白米を食べることができるということである。
私は16世紀からやって来たので、これを悟った時、「革命だ…!」と小さく叫んだ。
…え?米を研ぐのがめんどくさい?
無洗米があります。
ちなみに私は無洗米を買っているが、米を研ぐという行為によって私の中に眠る日本人の心がさわさわ、さらさらと騒ぎ出すのが楽しいのでわざわざ研ぐことが多い。
え、何?ラップで包むのもめんどくさい?
それは私もめんどくさい。ご飯を冷凍するためのタッパが売っているので、それに詰めればかなり楽だ。タッパはコンビニや100均で買うことができる。タッパは耐熱性にこだわろう。溶けるから。
…何ッ!?1週間に1日も休日がなく、ご飯を炊く時間がない…!?
僭越ながら、仕事を辞めてはどうだろうか。
※個人の意見です
4/27
これはジャーマンポテトだ。少なくとも私の中ではそういうことになっている。じゃがいもの切り方がやけにバラバラだが、恐らく侵入者と剣を交えながら切ったのだろう。
春は新玉ねぎと新じゃがばかりが並んでいるので、新年度が4月から始まるこのシステムが続く限り、「スーパーにはいつ何時でも新玉と新じゃがが並んでいる。新玉は生でも食べれるし新じゃがは皮を剥かなくていいのに、なぜ普通の玉じゃがが淘汰されないのだろう。」などと考える私のような阿呆が、これから先も幾度あらわれるか知れたものではない。
そしてそのような阿呆は、「新」の季節が終わったとき、生の玉ねぎの辛さに泣き、じゃがいもの皮むきに咽び泣くこととなるのだ。
ただし私は新であろうとなかろうとじゃがいもの皮を剥かない。(もちろん芽は入念に取る。)
皮つきだとアウトドアっぽくてテンションが上がるし、ごみも少なくて済むし、何より面倒が減る。これを人は一石三鳥と呼ぶ。
5/9
レタスは熱を加えた時にその本領を発揮するということが発覚し、私は三日三晩気絶した。目が覚めたら…、体が縮んでしまっていた。幼馴染の父親は探偵事務所をやっていないようなので、世界線が錯綜してしまったようだ。
5/20
ポトフを作ったが、おたまがなくて詰んだ。
6/7
これは、じゃがいもと鮭と小松菜をみそバターで炒めた、欲望と若干の理性の具現化である。
一人暮らしをするのなら、みそを買わなくてはならない。みそのパックって1人だと腐らせちゃうらしいよ、と姉が言っていたので買うのを渋っていたのだが、ついに買ったら結構使う。ヒトの6割は水分と言うが、日本人の場合はその半分をみそスープで補っているという話も聞く。当然ながら、残りの半分は生茶だ。
6/25
ベーコンアスパラを食べたくて材料を買ってきたが、巻くのが面倒になって卵で誤魔化した。「ズボラを誤魔化したいときのために、卵は決して切らしてはならない」と、かのハンムラビ法典にも縦読みで刻まれているそうだ。
7/22
急になんなんだ、と思いましたか。
夏はトマトとナスを食べておけばなんとかなる、ということが言いたかったです。
あとビフォーアフターってなんかかっこいいし。
8/5
ナスは縦に切ると一層おいしい気がするので隙あらばこのようにしている。
8/30
ベーコンは使い勝手が良すぎる。ここまでを振り返ってみれば、登場回数が一人勝ちしている。次点でじゃがいもだが、ベーコンは冷凍できる点で優っている。冷凍は革命。冷凍庫がない人は、玄関のドアを売って冷凍庫を買ってください。
9/5
9月。素麺だけではめんつゆを使いきれなさそうなことに不安を覚え、めんつゆで肉じゃがを作った。
なお、その努力むなしく、現在もめんつゆは冷蔵庫の一番上の段に転がっている。
10/31
これはフレンチトーストである。
実は自炊開始後1週間ほどの時分にもフレンチトーストを作ろうと試みたのだが、バターと牛乳と砂糖がなかったので、サラダ油と豆乳とみりんで代用したら全くもって違う料理になった。当然だ。前田のクラッカーがサンバをしている。
その後材料を揃えてリベンジマッチを挑んだのが上の写真だが、あろうことか牛乳を入れるのを忘れた。しかし当時の私はあまり焦ることなく、いつ浸しても一緒だろと、焼き上がってから牛乳に浸して食べた。全く一緒ではなかった。当然だ。クラッカーも呆れて動きを止めた。
これらのフレンチトースト春の陣・秋の陣により、
"「たぶん一緒だろ」と思ったときあるある: 一緒ではない"
というかけがえのない教訓を得たので、手帳にしたためたところ、そのページの価値が下がった。
11/27
冬はシチューやクリームスープばかり作った。なぜなら、寒かったから。
友人に写真を送ったら、「シチューをお箸で作るな」と言われて「たしかに」と思ったが、いまだに調理用のおたまは持っていない。お箸はいい。洗いやすいし、保管に場所を取らない。
12/14
キーマカレーならレンジで作れそうと思ったので作ってみたら、意味不明なくらいさっさと作れたので驚いてお腹を壊した。カレールーとかケチャップとかを入れたらできたっぽい。曖昧で申し訳ないが、あまりにも瞬間的な出来事だったのでよく覚えていない。
1/26
チキンの揚げ焼き。
ー揚げ物が食べたいけど中華鍋なんて無いし揚げるのが面倒なあなたに捧ぐーがキャッチコピーの、「揚げ焼き」というギリ合法のチート行為を敢行した。フライパン最高。
……こいつずっとフライパンで写真撮ってんな、と気づいてしまった方もいらっしゃると思うが、お察しの通り、皿に美しく盛り付ける能力が皆無だからだ。1枚目の写真を思い出していただければよく分かるだろう。
フライパン、最高。
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さて、本題である。
ここまでで褒めた材料を全て使って、自炊一年目の集大成となる料理を作りたいと思う。もちろんレシピはない。あるのはこの、灰色(であることが期待される)脳細胞だけなのだよ。
ルール
・褒めたものだけを使う
・褒めたものは全部使う
いたってシンプル。シンプルの神と勝利の女神は仲がいいのか?いざゆかん……
精鋭部隊。
スチャッ
とりあえずバターを敷く。
幸先:悪め
敷き詰めるには若干足りなかったフライパンの面積。
味噌を塗ろうと思ったら全然上手くいかず、上からみりんをかけて溶かそうとしたがやはり上手くいかなかった。
次の工程は、こうだ。
このとき私は、バターとナスって合うの?合っちゃうの!?などと考えていた。
しかし、おたまも持たぬガチアマさんがフライ返しを持っているわけなどない。
仕方ない、お箸で裏返し…て……
あっ!!
まって!焦げてる!ちょ、タンマ!まって、一瞬!!一瞬まって!!
〜秘技・白鳥の湖〜
臭い物には蓋、黒いものには白。そういうこと。
フライパンがパンパン(リズムが良い)だし、1品目はここで終わりでいいや。
レタスはなるべくワイルドに見えるように細心の注意を払った。トマトもおにぎり型が気に入ったからそのまま入れちゃえ。ワイルドの神は細部に宿る。
~5分後~
おっ。ええやん。
~8分後~
……ん??
なんかちまっとしちゃった。トマトとレタスの力関係が明らかに逆転している。
まいっか、完成!
完成です。
(茶碗はわざわざ実家から持ってきたのに1週間で割ってしまい、次も陶器を買うのが癪だったので木製のものを買った。)
……あれ?
ちょっと待って、
主菜どれ?
これ、タンパク質足りなくない?
やばい、このままじゃ私の中のタンパク質警察に逮捕される!!
それっ
OK。レンジで卵スープを作って一件は落着した。
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ごちそうさまでした。
今食べ終わって文を書いているが、
トマトの丸焼きはメチャクチャ美味いということと、料理に触れ始めて1年しか経っていない人間が料理を創作することは、世界一非合理的な蛮行である
ということが分かった。
……つまり、そういうこと。
さようなら。